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不動産相続の心得(中)妻が住む権利 居住権の活用で節税も

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76993580W1A021C2NZKP00

 

良男 わりと最近、法改正があって新しい仕組みができたんだったっけ?

幸子 「配偶者居住権」ね。相続法の改正で、2020年4月から始まった制度よ。

故人の自宅をその配偶者と子などが相続するとき、自宅の評価額を配偶者が自宅に住み続ける居住権と、その居住権の価値を差し引いた所有権に分けて、配偶者と子がそれぞれ相続するの。

幸子 具体例で説明した方がいいわね。夫が亡くなって、妻と子1人が東京都内の評価額1億円の自宅と、預貯金4000万円を相続したとしましょう。

幸子 配偶者居住権は他人に売却できないから、当然ながら所有権と比べて評価額が低くなる。

実際にいくらに設定するかは妻の年齢など条件によって変わってくるの。

年齢が若い場合は長く住み続けられる可能性が高いから、居住権の評価額も高くなるわ。

建物の築年数なども影響する。

仮に居住権が4000万円とすると、1億円から4000万円を差し引いた6000万円が所有権の価値になって、これを子が相続する。

預貯金は3000万円を妻が、1000万円を子が相続すれば、自宅と合わせて7000万円ずつ、ちょうど法定相続割合の2分の1ずつ相続することになる。

幸子 残された配偶者の生活を安定させることが目的なの。

妻が自宅に住み続けるために自宅をまるごと相続し、すでに独立して自宅にいない子が預貯金を相続したら、今回のケースでは自宅だけで法定相続割合を大きく超えてしまう。

預貯金をまったく相続できなければ生活に不安が残るわ。

自宅の所有権と預貯金をそれぞれ半分ずつ相続する場合と比べても、居住権を設定した方が妻の受け取る預貯金は多くなるわね。

幸子 制度が始まった20年4月以降の遺言書でないと効力がないわ。もしそれ以前に書いた遺言書で配偶者居住権に触れていたら、書き直す必要があるわね。

幸子 実は、節税にもつながりやすいのよ。

残された配偶者が亡くなって、その遺産を子が相続する「2次相続」のときには、配偶者居住権は消滅するので相続税の対象にならないの。

幸子 これも具体的な例で考えてみましょう。

自宅1億円を妻と子が相続するケースで、配偶者居住権を設定せずに半分ずつの共有で相続したとすると、妻が亡くなって2次相続するときには、自宅の評価額が変わっていなければ所有権2分の1の評価額5000万円が再び相続税の対象になるわよね。

幸子 ところが夫が亡くなったとき、つまり1次相続で配偶者居住権を4000万円設定した場合だと、妻が亡くなったときに居住権自体が消滅するの。

あくまで配偶者が住み続ける権利だからね。

すると、自宅の2次相続には相続税がかからないわけ。

特に地価が高い都市部に広い自宅を持つ富裕層にとっては節税効果が大きくなりやすいわ。

幸子 使うことを検討してみる価値はあるけど「注意すべき点もある」と指摘する専門家も多い。

税理士法人レガートの代表社員で税理士の服部誠さんは「自宅を将来売却するつもりなら、居住権を設定するとトータルで税負担が増える場合がある」と話していた。

幸子 もともと自宅の評価額が低い場合や、配偶者が高齢のために居住権の評価額が低くなってしまう場合も、節税効果は薄くなるわ。

それと、居住権をはっきりさせるためには登記の必要もあるから、司法書士に依頼することになる。

もともと制度の趣旨は、あくまで配偶者の生活の安定が目的。

専門家とよく相談して、使うかどうかは慎重に判断することが大切ね。