変化を嫌う(1) 多様性求め異議相次ぐ 入試筆記なしの先端エンジニア大学、改善拒む旧弊打破

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76943880V21C21A0MM8000/

 

入試で筆記試験は行わず専門性・人間性・国際性を重視する1時間半の面接のみ。

 

1学年300人で海外留学が必修、半数は大学院へ進学――。

 

アスキー創業者で元マイクロソフト副社長の西和彦氏(須磨学園長)はエンジニア育成に特化した日本先端工科大学(仮称、神奈川県小田原市)の2024年開校を目指して奔走する。

 

東京大で教える西氏には長年の不満があった。

「東大工学部は日本史や漢文ができないと入れない。でも本当にエンジニアに必要な資質なのか?」

 

東大入試は文系・理系の科目を満遍なく得点する必要がある。

エンジニアの才能があっても文系科目が苦手だと積み残される。「そんな若者にチャンスを与えたい」

秋入学の一貫校

 

 

幼小中高の一貫教育で知られる玉川学園(東京都町田市)。

幼稚園年長組の9月から小1の学習を始め、高校を6月に卒業する一貫教育校の設立を目指す。

背景にあるのは急速に進む社会のデジタル化とコロナ禍だ。

小原芳明理事長は「危機は変革の好機。何もしないと社会に取り残される」と語る。

 

デジタル技術を駆使した街づくりを支援する国の「スーパーシティ型国家戦略特区」。

前橋市は小中高大の一貫教育型を盛り込んだ構想で応募した。

公設民営の小中一貫校と市内の高校・大学と連携し、飛び級も可能にする。

目標は「究極の個別最適学習」だ。

飛び入学進まず

 

優秀な若者に早期教育を保障する飛び入学も広がらない。

1998年の制度化以降、導入は8校。

第1号の千葉大でさえ累計合格者は98人だ。

米国では大学学部生1600万人のうち17歳以下が120万人、2割強が25歳以上だ。

ノーベル賞受賞者の8割は21歳以下で大学を卒業した。年齢に関係なく才能やキャリア設計に応じて学べる柔軟性・多様性が米国の強さの源泉だ。

変化を嫌う体質を変えない限り、激動期に必要な人材は育たない。改革の芽を摘み取る愚を繰り返している余裕はない。