コロナ禍、住宅ローン見直す 借り換えや条件変更早めに

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0766I0X01C21A0000000

 

ローンの借り換えや借入先に条件変更を申し込むなど、返済計画を早期に見直すことが大切だ。

 

利用者は具体的にどう対応すればいいのかポイントを理解しておこう。

 

今後の返済不安に対応するには、住宅ローンの借り換えが有力な選択肢になる。

 

住宅ローン仲介サービス「モゲチェック」を手掛けるMFS(東京・千代田)ではコロナ禍とともに借り換えの申込件数が急増。

 

足元ではコロナ前と比べ3倍超の月900件近い申し込みがあり、5~10年前にローンを組んだ40代前後が目立つという。

 

最近はがん診断などで残債を減免する疾病保障を無料で付帯するネット銀行もある。

 

MFSの中山田明・最高経営責任者(CEO)は「金利を少しでも下げるのに加え、疾病保障で万一のリスクに備えたいというニーズが大きい」と指摘する。

 

コロナ禍を受けて、金融庁は住宅ローンの条件変更を速やかに実施することや、条件変更時の手数料を無料化することなどを金融機関に要請しており、銀行側も積極的に条件変更に応じている。

金融庁によると、2020年3月以降の累積申込件数は21年8月末時点で5万5千件超に急拡大し、このうち審査中などを除き97%で条件変更が実行された。

通常はローン返済を延滞すると新たなローンを借りにくくなるが、各行ともコロナ禍による負担軽減は信用情報に原則記録しないことにしている。

金融機関「柔軟に対応」

返済負担を軽減する条件変更は主に2つの方法がある。

一つは返済期間を延ばし、完済まで月々の返済額を軽減する方法だ。

毎月の返済は軽くなる半面、返済期間が長くなる分、利息も長く払い続けるため総返済額は増える。

住宅金融支援機構の「フラット35」は返済期間の延長が最長15年、80歳まで。

民間銀行では総返済期間を35年超に延ばせないところがある。

もう一つは、返済期間は変えずに目先の返済額を減らす方法だ。

具体的には元金の返済を待ってもらい、その期間に利息分を支払う形になる。

軽減期間を限定し、完済までの利息負担はそれほど増えない。

ただ、期間終了後に当初計画より多く残っている元金を当初の返済期間で再計算するため月々の負担額は増える。

フラット35では原則として最長3年まで毎月の返済を減らせる。

民間銀行ではまず1年程度軽減し、その後も状況次第で条件を見直すところが多い。

コロナ禍からの景気回復が鈍いこともあり「顧客から相談があれば再度の返済猶予にも柔軟に応じている」(大手金融機関)。

債務整理の特則で減免も

20年12月には新型コロナの影響で収入が減った個人の住宅ローンなどを減免する新制度「自然災害債務整理ガイドライン コロナ特則」も始まった。

自然災害の被災者に対応する仕組みをコロナ禍にも適用したものだ。

まず特則の対象者は失業や廃業などで収入の回復が見通せず、ローンが返済できない人を想定する。

20年2月1日以前に借りた住宅ローンが対象で、同日以前に返済が滞るなどして借入先から残債の一括返済を求められる「期限の利益喪失」が発生していないことも必要だ。

また金融機関の返済猶予では元本が減らないのに対し、コロナ特則では預金や住宅売却資金などで返済しきれない債務は減免される。

一定の現預金は手元に残せるとされているため生活再建に利用することができ、個人の信用情報にも記録は残らない。

特則を利用するには債務者が金融機関に手続きの着手を申し出る。

最終的に金融機関が同意し、裁判所での特定調停を経る必要がある。

特定調停に関する費用は自分で負担するが、弁護士など専門家の支援は無料で受けられる。