https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75642190Q1A910C2MY1000/
20XX年、海水面以下の「ゼロメートル地帯」に位置する東京都東部。
長雨による河川の洪水や巨大台風に伴う高潮が同時に起こりほぼ全域が浸水した。
多くの住民は「浸水対応型建築物」にいち早く逃げ込んだ。
1階部分は水没したが、2階以上の空間では電気や水道などが使えた。
食料も備蓄され、長期間にわたる避難生活を送れた。
葛飾区では「浸水対応型市街地構想」に基づくまちづくりが進んでいる。
荒川と江戸川に挟まれ、広域避難できなかった場合は約24万人の緊急避難者が発生すると想定。
「水が引くまでの2週間程度、最低限の避難生活が確保できる市街地を30年程度かけて段階的に整備する」(情野正彦・都市整備部長)
構想には、東京大学の加藤孝明教授と今井公太郎教授が考案した平常時には水辺に親しむ空間となり、浸水時には避難拠点とする浸水対応型建築物が盛り込まれた。
1階部分には柱だけの空間にした「ピロティ」を採用し、玄関と駐車場、フットサル場などとして利用する。
2階はライフラインを支える機械・電気室、巨大な備蓄庫となる商業施設などを設ける。浸水時には階段が船着き場になり、避難に使える。
一条工務店は20年、防災科学技術研究所の大雨を降らせる実験施設で「耐水害住宅」を使った浸水実験を公開した。
耐水害住宅は、玄関ドアや窓の隙間をなくして水密性を高めたほか、トイレやキッチンなどの排水管からの逆流を自動で防ぐ特殊な防止弁を備える。
画期的なのは家を敷地内の四隅に設置したポールとつなぎ、水位があるレベルを超えると、係留されている船のように水に浮き出すことだ。
洪水が引いた後にはほぼ元の位置に戻るという。実験では1階天井の高さ程度の水位3メートルに達しても被害がなかった。
一条工務店では「従来の新築住宅に数%程度の費用を上乗せすれば耐水害住宅にできる」と説明し、「災害時には避難をするのが前提だが、家に戻ったときにいち早く生活が復旧できる」と利点を訴える。
イタリアの観光都市、ベネチアでは歴史的な建造物で1階には船着き場、2階が居住空間という構造になっている。
国土の4分の1が海面より低いオランダの首都アムステルダムなどでは水に家が浮かび、水上都市の構想もあるなど、水と共存する暮らしは各地で見られる。
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